No.1 私とベルカント唱法の出会い

それは、1984年9月6日、


東京、五反田の、


ゆうぽうとホールで 、


行われた、


レナータ・スコット


ソプラノリサイタルでした。



 彼女のリサイタルの、


1曲目は、


イタリアの古典歌曲でした。



 音楽大学の学生なら、


誰もが習う、


初歩的な、


教材の曲でした。


 しかし、


彼女が歌うと、


まったく別物でした。



 オペラ歌手にありがちな、


大柄で、立派な体格、


というわけでもなく、


 年齢も、すでに、


50歳を超えた、


レナータ・スコットの口から、


奇跡のような、


音楽が流れ出たのです。



 あまりの素晴らしさに、


私は涙があふれ、


とまりませんでした。


 
今まで、


私が耳にしてきた、


オペラ歌手の発声は、


正確な音程が、


わからないほどに、


強いビブラートのついた、


不規則に、


波打ったような発声でした。



 大きな声を出すために、


何もかも、


犠牲にしたような、


発声法でした。 



しかし、


レナータ・スコットの、


発声は、


まったく違いました。


決して、大音量、


というわけではないのに、


大きな会場全体に、


響き渡り、


まるで、


高いところで、


小鳥がさえずっているように、


遠くまで、


良く、通る声でした。



 私は、前々から、


不思議でした。



 学生時代、


私は、しばしば、


声楽科の友人から、


ピアノ伴奏を、


頼まれていました。



 学生ですから、


一回、60分のレッスンで、


歌う曲は、


ほんの2~3曲です。



しかし、


私の伴奏で、


歌っている友人は、


その数曲で、


声に疲れが、


出ていました。


 
どんなに、


短い作品でも、


オペラの演奏時間は、


2~3時間です。



 数曲で疲れが、


現れるような声では、


オペラは歌えません。 



でも、


レナータ・スコットの、


発声法なら、


納得できます。



 舞台の上で、


動き回り、


お芝居をしながら、


きっと2~3時間、


歌えることでしょう。



 あの、レナータ・スコットの、


リサイタル以来、


私はベルカント唱法について、


深く知りたくなったのでした。


 ~つづく~


 2014年12月6日 


大江 利子 


(レナータ・スコット)

クーポラだより

幼い頃から、歌とピアノが大好き! ピアノを習いたくて、習いたくて.・・・。 念願かなって、ピアノを習い始めたのは、13歳。ピアノを猛練習し、 高校も大学も音楽科へ。就職も、学校の音楽の先生。夫、大江完との出会い。 イタリア留学。スカラ座の花形歌手、カヴァッリ先生の教え。33歳から始めたバレエ。 音楽が、もたらしてくれた、たくさんの出会いと、喜びを綴ったのが、クーポラだよりです。

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